セガ第一研究開発本部 ~ セガの考えるゲームプランナーとは? モバイルワークス 松永純氏の場合

アーケードに家庭用ゲーム機、そしてスマートフォンの時代へ。ハードウェアが広がる中でゲームの面白さを究めるセガ第一研究開発本部。ゲームはフリープレイで、プレイヤーの意思に応じて、アイテムや追加コンテンツで課金するというようなマネタイズ手法を取るソーシャルゲームが当たり前になっている現在、ゲームの作り方も大きく変わってきているようです。

今回はセガの第一研究本部の第一研究開発本部モバイルワークスで部門長を務めている松永純氏からセガで働くゲームプランナー像をうかがいました。松永氏はあの大ヒットゲーム「チェインクロニクル」の統括ディレクターでありメインプランナーでもあります。学生時代からのゲーム好きが高じてRPGを作りたくてセガに入社。プロとしてゲーム作りに入ってからも数々のヒット作を手がけセガのプランナー道のど真ん中を歩んできました。そんな松永氏が長年ゲームの面白さを追求してきた中で考えるスマートフォン時代のゲームプランナーとはどんな仕事なのでしょう。

第一研究開発本部モバイルワークス 松永純氏

第一研究開発本部モバイルワークス 松永純氏

■ゲームの源を考え、プログラムとデザイン以外のすべてを担当するのがゲームプランナー

「ゲーム作りにおけるプランナーは、その名の通り企画原案をプランニングする仕事です。すべてはプランナーから始まり、そこで創造した世界観やアイデアがプログラマーやデザイナーに流れていく構造になっています。ゲーム作りにおける源がプランナーであり、それを実際のゲームという形に持っていくために必要なことをすべてするのがゲームプランナーの仕事です」

ゲームの源となる世界観を創り出す。しかし、それはイマジネーションだけの仕事ではないと松永氏は続けます。

「プランナーは考えるだけが仕事ではありません。ゲームという形にするために、デザイナーとプログラマーが担当する仕事以外のことはすべて引き受けるんです。アイデアを仕様書という形にしてデザイナーやプログラマーに渡すだけでではゲームは完成しません。頭の中のイメージを分かりやすい言葉に置き換えて企画書を作り、会社にプレゼンして予算を取って、ゲームシステムやゲームバランスを設計して、シナリオだって書く。さらに、制作チーム全体のモチベーションや進行を管理するのもセガのプランナーの仕事ですね」

広い、実に広い!というのがセガのゲームプランナーという仕事の印象。しかし、プランナーのアイデアをしっかりキャッチして想像もしていなかったグラフィックや動きを作ってくるのがセガのデザイナーやプログラマーなのです。

「他社の方と一緒に仕事する機会もあるんですが、セガのデザイナーやプログラマーはゲーム作りへの意識が特に高いですね。今までずっとゲームと作り続けてきたノウハウがあるので、単純に画面を切り替えるとかキャラを動かすだけではなく、ユーザーに対して刺激を与える動きを考えたり、そんな処理を可能にしたりする技術力を持っています。だから、こちらのプランに対して『あっ!』と驚くような絵や動きを提案してきて、プランナーがお株を奪われることも多々あります。そうするとこっちも負けてられないなって、また新しいアイデアを練って。それの繰り返しでゲームができていくんです。すごく刺激的ですよ」

そんなプロフェッショナルが揃っているため、チェインクロニクルなどのモバイル系のゲームの根幹は少数精鋭で作っているそうです。

「モバイルゲームで好調なタイトルは少人数のコアメンバーのプランナーと制作チームで作っているケースが多いですね。こういうゲームをユーザーに見せたいという意志があり、それがゲームシステムや世界観・シナリオと明確につながっているゲームは成功しています。どうしても人数が多いと意思共有が難しくなりますが、少人数だと皆でひとつの目的に向かって走りやすいんですね。ですのでモバイル分野では、1人でプレッシャーに打ち勝ちながらもゲームを作れるプランナーが求められています。見方を変えれば、1人でいろいろなチャレンジもできますし、自分自身のクリエイティビティをフルに発揮することができるのがモバイルゲームの分野だと思いますよ」

■「チェインクロニクル」の作り方

松永氏がプランナーとして手がけている「チェインクロニクル」。このタイトルでは、どんなことを考え、どのようにプランニングをしていったのでしょうか?そこにはセガのゲーム開発の経験が生きていると言います。

「スタートは、ユーザーはこういう体験を求めていると想像するところからです。「チェインクロニクル」の場合、最初に思い描いたのは僕くらいのファミコンゲームに熱中していた世代。大人になると仕事もあるし徹夜してゲームするのも無理だし、家庭用ゲーム機の電源を入れることができなくなっている方も多いんじゃないでしょうか。RPGの大作モノはもうハードルが高いし、携帯ゲーム機だってカバンから出してプレイするのも時間がなくてキツイ。でも、ゲームに熱中していた頃の濃いゲームを、あの頃の熱いゲーム体験を本当は再び楽しみたい。そう思っている大人は多いだろうと思っていました。そんな大人がポケットから出してサクっと遊べるんだけど、内容は濃いRPGを作ったらどうだろうというのが発想の原点です」

この「源」を考えるのがゲームプランナーの最初の仕事。そして、そこからゲームに必要なロジックを生み出していきます。

「ではどうしたらそれが実現できるんだろう?と考えるのが次のステップです。ただ単にスマホに大作RPGを突っ込んでも、遊びやすいものにはなりません。5分~10分くらいの間でゲームのサイクルを回せて、タッチパネルで遊んで楽しいゲームにするとか、条件を割りだし、それに必要なゲームシステムなどを整理するのがプランナーとしての最初の仕事。そこから、1プレイでちゃんと満足が得られてビジネスも成立するゲームフローを考え、1つ1つ要件に落としていきます。まず届けたい体験ありきで、そのあとにビジネスも成立させる。絵をリッチにすればいいとか、ガチャで新アイテムをゲットさせて満足度を上げれば、儲かるからそれで良い、というのはセガのゲームプランニングではありません。ポケットからスマートフォンを取り出して遊び終わるまでの間に、ユーザーさんをきちんと満足させられるゲームのアイデアを練るのがセガのゲームプランナーです」

チェインクロニクルはJRPGの要素を取り入れ、熱いゲームファンを満足させる膨大なキャラクターとシナリオ、そしてタッチ操作で遊べてテンポ良く進むバトルシステムを採用し、大作RPGをやり込んでいた世代という松永氏が思い描いた世代も含め含めて大ヒットしました。この作品によって、これまでのスマートフォン向けゲームに対するセガの回答を出したと言えます。

「チェインクロニクルの完成度に関してとても満足できています。今のスマートフォンのスペックで望める最適なRPGが提供できたのではないかと。冒険感を出すなら3Dでフィールド上を走り回る方が良いかもしれないけど画面が小さすぎるから地図を進む形式にしたとか、1プレイの長さを適度にするためにタッチでシナリオを選んでバトルするとか、想像していたユーザーさんたちに、一番快適に楽しく遊んでもらえるものがチェインクロニクルだと自負しています。そしてあらためて、この分野でのゲーム内容の密度や見せ方を再提案したことで、ソーシャルゲームというジャンル自体にも影響を与えることができたと感じています。ちゃんと濃いゲームや、物語を求めているユーザーさんは、スマホゲームの世界にもたくさんいるんですよと言えたかなと。実際、業界も変わってきたみたいで、シナリオライターさんに会うと、最近スマホゲームの仕事が増えたんだよって感謝されることが多いです(笑)」

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■スマートフォン時代に向けたゲームプランナーの仕事とは?

自身もドラクエ3が欲しくて行列に並んだ世代。セガに入社して新人時代からゲームの原案やシナリオを書き、三国志大戦や戦国大戦など「大戦」シリーズのゲームデザインを手がけ、メダルゲームからアーケード、家庭用ゲーム機までさまざまなハードウェアでゲームを作る経験をしてきた松永氏も、スマートフォン向けのゲームの作り方は今までと大きく違うと考えています。

「ゲーム部分を制作するのは今までの経験を活かすことができます。でも、大きくマネタイズの部分が違います。マネタイズの違いによって、ビジネスの話以上に、ユーザーさんの気持ちの持ちようが大きく変わるんです。スマホゲームはどちらかと言うとアーケードゲームに近いですね。座って100円払うか、タダで始められるかの違いはありますが、最初のハードルは低いので。家庭用ゲーム機の場合は、最初にソフト代を数千円払って購入します。だからクライマックスは後の方にあっていいんです。お金を先払いしているので最後まで遊んでもらえる可能性が高いので。それに対して、1円も払ってないモバイルゲームはオープニングを見ている時点で飽きたら気軽にプレイをやめることができます。なのですぐに気持ちよくなってもらうポイントやゲームシステムを理解してもらうポイントを最初に持ってくる必要があるんです。30時間遊んでボスを倒して感動してもらうんじゃなくて、遊んだら5分でユーザーに感動してもらわないといけないんです」

そこでソーシャルゲームの場合、最初のチュートリアルにレアカード獲得タイミングを持ってくるなどユーザーに効率よく楽しんでもらうための工夫がなされています。しかし、チェインクロニクルなどセガのゲームはその効率化を超えた気持ちよさを考えているそうです。

「最初のチュートリアルのうちにレアカードを出せば気持ちよくなってやり続けるよねというのが従来のソーシャルゲームの鉄板な作り方らしいんですが、すぐに感じられる気持ちよさってそれだけじゃないだろうと、真っ向勝負しました。レアカードが当たるとか他のユーザーと数字で競って勝つから気持ち良いとかではない、違う喜びをちゃんとはじめのタイミングで見せたかったんです。既存のソーシャルゲームにはない、物語の期待感とか、バトルシステムの楽しさとか、仲間と出会うことの喜びそのものを、最初のチュートリアルのうちに感じてもらえるようなゲームにしています。欲張って全部入れるのは、すごくしんどかったですけどね(笑)」

■ゲームが好き、面白いゲームを作りたいというモチベーションを持っている人がプランナーになれる

いかがでしたか?セガでのゲームプランナーという仕事について、いろいろと感じることができたのではないかと思います。やはりゲームプランナーとして求められるのはゲームが好きであること。そして、ユーザーが幸せに感じることや気持ちいいを感じることを発想できる人のようです。

「ゲームプランナーになる資質ですか? 面白くて新しいゲームを作りたいというモチベーションを持っていることが第一です。特にスマートフォンのゲームは進化しているまっただ中にありますから、どんな形でゲームを作ったら遊んだ人が幸せになってくれるんだろうって柔軟に発想できる人が向いていますね。最初にいろいろなスキルが要求されるようなことを言いましたが、レベルデザインでもシナリオでもコーディネート能力でも何か1つ武器になるものがあれば十分です。そのスキルを活かしながら、あとは現場で新しいスキルを身につけていってもらえればいいので。さらに言えば、そういった武器がなくてもゲームを作るモチベーションが高ければ、問題ありません。その高いモチベーションが、チームの士気に良い影響を与える大きな武器になるので。モバイルはもちろん、家庭用でもアーケードでもセガはフィールドが広いですから、健康でガッツがあってモチベーションがあればいろいろな場所で活躍できると思います」

ゲームプランナーという仕事は、やはりゲーム好きが向いているようです。チェインクロニクルのメンバーにはゲーム業界の経験が全くないけど、チェインクロニクルが好きでやり込んだ人が入社したケースもあるそう。高いモチベーションを持った人と一緒に働けるのを楽しみにしているそうですよ!


2014-04-16 | Posted in 注目の企業Comments Closed 

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